[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
題はさしずめ『君の隣』といったところでしょうか。
ものすっごくへなちょこ文章なので、読んでも後悔しない方だけ続きをどうぞ……。
春の麗らかな日曜日、あたしは友達と並んで歩いている。隣を歩く友達はサトミちゃん。
彼女は背が小さくて、可愛らしくて、まるで日本人形が歩いているみたい。サトミちゃんをじっと見ていると、彼女はどうやら視線に気付いたらしく、「なぁに?」と首をかしげてあたしのほうを見た。
「ううん。なんでもない」
あたしは軽く笑って答える。サトミちゃんの大きな黒い瞳が瞬きする瞬間が、あたしは好きだった。だからあたしはわざと彼女のほうを見るのである。するとサトミちゃんは必ず長い睫毛をパチパチさせてこちらを向いてくれるのだ。
「気になるわ。言ってよ、マリちゃん」
「ん~……。サトミちゃんの家って凄くサトミちゃんらしいよねって思っただけ」
「私らしい……?」
あたし達は図書館に行く約束をしていたのだけれど、行く途中でサトミちゃんが忘れ物に気がついた為、彼女の家に寄ったのだ。だから今はサトミちゃんの家から図書館に向かう途中。
「うん。すっごくサトミちゃんが住んでるって家だった」
「そうかしら?」
思いっきり頷くと、サトミちゃんは上品そうにクスクス笑った。
初めて見た彼女の家は、木造の古い大きな家だった。いかにも日本的な、でも木の温かさがそこに住む人を優しく包んでいるような、そんな家。あたしと彼女が友達になってまだ一ヶ月も経ってないけど、あたしにだって、そのくらいわかる。
あの家は凄く「サトミちゃんらしい」。
否、彼女に相応しい家といったほうが正しいだろうか。とにかくあたしの家とは大違いだ。
「私はマリちゃんの家だってマリちゃんらしいと思うわ」
「え……?」
「だって、マリちゃんの家は御伽噺に出てくるお人形の家みたいだもの」
「ちょっとお洒落なだけの、どこにでもある普通の家よ」
「そんなことないわよ」と立ち止まって、サトミちゃんはあたしの髪に手を伸ばした。
「ね、想像してみて。もし、もしよ。お家が取替えっこできるとしたら、マリちゃんは私の家で暮らしてるのが想像できる?」
あたしは首を横に振る。サトミちゃんに相応しい家にあたしが住むなんて、全然相応しくない。それを言うと、サトミちゃんは少し考えて、
「じゃあ、全然知らない人の家で暮らしてるのは想像できる?」
「知らない人?」
「そう。マリちゃんが全く知らない家の事よ。ほら、たとえばあそこの緑の屋根の家とか」
「……出来ないわ」
サトミちゃんはあたしの髪から手を離し、その手であたしの手を握った。そしてそのまま歩き出す。
「だからね」一言一言を大切にするように、サトミちゃんは話す。
「それはマリちゃんの家がマリちゃんに似合ってる証拠なのよ」
にっこりと笑顔を向けたサトミちゃんに、あたしも笑って返した。そして、こうして並んで歩いている友達を彼女以外に想像してみたが、すぐに止めた。
そんなの考える必要もなく、答えは出てるから。
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |